2025-04-22
相続税を計算するとき、ケースによっては「二割加算」と呼ばれる制度が適用されることがあります。
しかし、二割加算とはどのような制度なのか、どうやって計算するのかなどがわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、相続税の二割加算の概要や計算方法、相続時の注意点について解説します。
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相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付する必要があります。
相続税は自分で計算して求めなければならないため、自分が二割加算制度の対象者かどうかを確認しておくことが大切です。
まずは、相続税の二割加算とはどのような制度なのかについて解説します。
二割加算とは、一部の相続人の相続税が通常の税額よりも20%多く課される仕組みです。
ただし、すべての相続人が対象となるわけではありません。
相続税の二割加算制度の対象者は、被相続人の孫、兄弟姉妹、甥姪、祖父母、代襲相続人ではない孫、養子となった孫、内縁の配偶者です。
そのほか、被相続人と生前に親しい関係にあった特別縁故者は法定相続人ではありませんが、遺言書などによって遺産を相続する場合、二割加算の対象となります。
一方で、二割加算制度の対象者とならないのは、被相続人の配偶者、子、父母です。
二割加算制度の目的は、亡くなった方と血縁関係が薄い相続人が優遇されすぎないようにすることです。
たとえば、亡くなった方の兄弟姉妹などの相続人は、遺産を受け取る可能性が低い立場にあります。
通常、親から子へ財産が継承されることを前提としており、直系の相続人以外が相続する場合、その恩恵が大きくなりがちです。
そのため、税負担の公平性を考慮して二割加算が適用されます。
また、孫への相続については、世代を飛ばして財産が移ることで相続税の負担が軽減されるのを防ぐ目的もあります。
したがって、孫が相続する場合も二割加算の対象となるでしょう。
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相続税を納めるときには、自分で納税額を計算する必要があります。
正しい税額を納められるようにするためにも、相続税の二割加算の計算方法を把握しておきましょう。
相続税を計算するときには、まず課税対象となる遺産総額がどのくらいになるのかを調べることが大切です。
そのため、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産を含めて徹底的に調査しましょう。
課税対象となる遺産の総額は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いて求めます。
相続税を計算する際には、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で求められる基礎控除額を差し引くことが可能です。
たとえば、正味の遺産額が5,000万円で、法定相続人が配偶者と被相続人の弟の場合、「5,000万円-4,200万円=800万円」が課税対象となります。
各相続人は、それぞれの法定相続分の割合に応じて遺産を相続します。
上記のケースでは、配偶者が全体の4分の3、弟が全体の4分の1を相続することになるでしょう。
この割合に基づいて、相続人ごとの相続税額を計算すると、以下のようになります。
また、相続税の税率は相続額によって異なりますが、上記のケースではいずれも10%です。
したがって、配偶者と弟が納める相続税額は、以下のように計算できます。
配偶者は二割加算制度の対象ではないため、20%を上乗せする必要はありません。
一方で、被相続人の弟は二割加算制度の対象となるため、相続税額に20%を上乗せする必要があります。
上記の事例では、弟の相続税額は20万円であるため、加算される金額は4万円です。
したがって、弟は合計で24万円の相続税を納めなければなりません。
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二割加算の対象になると、亡くなった方から遺産を相続するときにかかる相続税の負担が大きなものとなりかねません。
それにくわえ、以下の注意点も併せて押さえておくことが大切です。
制度の対象であるにもかかわらずに申告をしないと、税務調査で指摘される可能性があります。
不正申告と見なされると、加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性がある点に注意が必要です。
加算税は、申告内容に不備がある場合などに課される税金で、相続税に関連するものには過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などがあります。
過少申告加算税は、申告額が過少だった場合のペナルティで、本来の納税額と当初の申告額の差額に10%を乗じた額が課されます。
ただし、差額が当初の申告額と50万円のいずれか高い金額を超える場合には、超過分に対して15%の税率が課されるため、注意が必要です。
無申告加算税は申告期限後に申告した場合などに課されるもので、納付税額の50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の税率が課されます。
重加算税は、悪質な脱税行為と見なされた場合に課されるペナルティで、過少申告時には原則35%、無申告時には原則40%の税率が課されます。
相続税は、原則として現金一括で納めなければなりません。
ペナルティが課されると納める相続税の負担がさらに大きくなる可能性があるため、正確な申告が求められます。
注意点の2つ目は、相続税対策として孫を養子にしても意味がないことです。
孫を養子にすることで法定相続人が増え、基礎控除額も上がるため、相続税額の節約につながると考えがちですが、実際には効果がありません。
しかし、養子となった孫は二割加算制度の対象者です。
そのため、孫にかかる相続税の負担が大きくなりかねない点に注意が必要です。
本来の相続人である子がすでに亡くなっている場合、孫は代襲相続人として遺産を受け継ぐ権利を得ます。
代襲相続人となった孫は、子の代わりとして扱われるため、相続税対策の制度の対象者にはなりません。
しかし、遺産を受け取りたくないからといって相続放棄を選択しても、その後に基礎控除額を上回る生命保険金や死亡退職金を受け取った場合、相続税を納める必要が生じます。
生命保険金や死亡退職金などは「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となるためです。
相続放棄をした孫がみなし相続財産を受け取ると、遺贈によって財産を取得したとされるため、相続税額が20%加算されます。
相続時精算課税制度を使って孫養子などに生前贈与をすると、二割加算が適用されることも注意点のひとつです。
また、1,500万円または1,000万円までの教育資金や子育て資金の贈与が非課税となる制度を利用して孫が資金を相続し、相続税がかかる場合、その孫は二割加算の対象となります。
なお、二割加算の対象となるのは、2021年4月1日以降に受けた贈与です。
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二割加算とは、特定の相続人が遺産を受け取るときに相続税額が20%加算される制度です。
計算方法は、まず遺産の総額を求め、そこから各相続人の相続税額の算出、対象者の税額に20%加算といった流れで進めていきます。
もし、二割加算の対象者であるにもかかわらずに申告が漏れると、加算税や延滞税などのペナルティが課されるおそれがある点に注意が必要です。