2025-04-01
不動産は物理的に分けることが難しい財産であり、相続人が複数いる場合は相続トラブルが生じる可能性があります。
トラブルを防ぐためには、相続発生時にどのような分け方を選択するか、将来の相続人同士で話し合っておくことが大切です。
本記事では、相続した不動産を分ける方法として、現物分割、代償分割、換価分割について解説します。
現物分割とは、物理的に細かく分けることが難しい不動産などの財産を、今の形のままで引き継ぐ方法のことです。
相続人の1人が不動産を引き継ぎ、ほかの相続人は不動産以外の財産を相続する方法や、土地を分筆する方法などがあります。
「分筆」とは、登記上1つの土地を複数の土地に分けることです。
たとえば、財産が土地1つで相続人が3人いる場合に、土地を3つに分筆し、分筆後の土地を1つずつ相続することがあります。
ただし、土地の場所や地域の条例によっては分筆が認められない場合もあるため、事前に確認することが大切です。
現物分割を選ぶ大きなメリットは、親族が長年住み慣れた家や土地を手放さずに済むことです。
代々受け継いできた思い出の詰まった不動産の場合、売却をともなう分け方では得られない精神的な満足感があります。
長年築き上げた近隣とのコミュニティを継続しやすい点も魅力です。
売却をともなう分け方では、不動産を売却するために広告を出したり、仲介業者に依頼したりする手間や費用がかかります。
また、売却までに時間がかかるうえ、市場の状況によっては想定より低い価格で手放さざるを得ないこともあるでしょう。
一方、現物分割であれば不動産を売りに出す手間や費用を抑えることができ、スムーズに相続が進むケースも珍しくありません。
相続した不動産が賃貸物件や駐車場などの収益物件であれば、売却せずにそのまま所有すると継続的に家賃収入などを得られるメリットもあります。
将来的に自ら利用する予定がある場合も、現物分割で形を保ったまま引き継ぐと、柔軟に活用方法を検討できるでしょう。
現物分割では「分筆後の土地の使い勝手や評価額が異なる」「複数の不動産がありそれぞれ評価額が異なる」といった問題が発生する可能性があります。
評価額の低い不動産を引き継いだ方がほかの財産も引き継いで金額を調整することもありますが、調整がスムーズに進むとは限らず、相続トラブルにつながりかねません。
土地の状況によっては、分筆後に大幅に価値が下落するケースや、分筆ができないケースもあります。
結果として、ほかの分け方(換価分割や代償分割)を検討せざるを得ないこともあるでしょう。
不動産をそのまま引き継ぐということは、固定資産税や修繕費、管理費など、不動産にかかっていた負担を相続人がそのまま引き継ぐということです。
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不動産を相続する際、「現物分割では不動産を物理的に分けられない」「評価額が偏っていて公平に分割できない」といった悩みが生じることがあります。
そんなときに検討したい分け方が「代償分割」です。
代償分割とは、相続人のうち誰かが不動産をそのまま受け継ぎ、それ以外の相続人に代償金を支払って相続割合を調整する分け方を指します。
たとえば、相続財産が評価額3,000万円の不動産1つで相続人が3人いる場合に、1人が不動産をまるごと引き継ぎ、あとの2人に1,000万円ずつ支払うケースが該当します。
代償分割は、換価分割(売却して現金化し、分配する方法)と異なり、「愛着のある不動産を手放したくない」「将来的に自分で使いたい」といったニーズに応えられます。
不動産をそのまま活用したい方にとっては、大きな魅力でしょう。
また、代償分割を選ぶと、不動産を受け継ぎたい方とそうでない方との利害調整がしやすくなります。
相続人の誰かが不動産を取得し、他の方は金銭を受け取る形式のため「価値が偏って不公平だ」との不満を軽減できます。
評価額に応じて代償金を調整できるため、無理なく公平性を保ちやすい方法です。
代償分割の大きなハードルは、不動産を相続する方が高額な代償金を一括で用意できるかどうかです。
不動産評価額が高いほど、代償金も大きくなります。
場合によっては、銀行からの借り入れや他の資産の売却を検討しなければならないこともあるため、資金計画が重要です。
また「どうやって代償金を算出するか」「不動産の評価額は正しいか」など、相続人間で合意を得るためには、納得できる算出根拠や十分な話し合いが欠かせません。
不動産の評価方法は複数あり、市場の動向によって評価額が変動する可能性もあります。
公平かつ客観的な評価をおこなうためには、不動産鑑定士や税理士など、専門家のアドバイスを得ることが望ましいでしょう。
代償金を用意するために新たなローンを組む場合、ローン返済のリスクが生じます。
また、借り入れができなかったり、返済が困難になったりすると、結局は不動産を売却せざるを得ない状況に陥る可能性もあります。
そのため、代償分割を検討する際は、資金調達の実現性や将来的なリスクをあらかじめ把握しておくことが重要です。
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換価分割とは、不動産をそのままの形で相続するのではなく、売却して得たお金を相続人同士で分け合う方法のことです。
現物分割や代償分割が難しいケースでは、換価分割を選択すると合意形成をスムーズに進められる場合も少なくありません。
売却によって不動産を現金化するため、不動産の評価額によるばらつきが問題になりにくく、相続人ごとの取り分も明確になります。
売却価格が決まればシンプルに分配できるため、公平性の確保がしやすい方法といえるでしょう。
相続人の誰も不動産を利用する予定がない場合は、不動産にかかる費用を支払ってまで不動産を相続したくないと考える方も多く、相続人同士の意見が対立するリスクがあります。
換価分割であれば売却によって不動産を手放すことができるため、このようなトラブルが発生しません。
換価分割の大きなデメリットは、長年住み慣れた家や先祖代々の土地を手放さなければならないことです。
不動産に強い愛着を持つ相続人がいる場合、意見の衝突が起きやすくなります。
また「将来的に価値が上がる可能性がある」「不動産運用などで利益を得たい」などのケースでは、換価分割を選ぶと資産形成のチャンスを逃してしまうかもしれません。
換価分割の前提は、不動産を適正な価格で売却できることです。
しかし、景気や不動産市場の状況によっては、想定よりも低い金額でしか売却できない可能性があります。
くわえて、売り出してから買主が見つかるまでに時間がかかる場合、相続手続き全体が長引くこともあるでしょう。
売却の際は不動産会社への仲介手数料、必要に応じてリフォーム費用や測量費などが発生します。
さらに、相続人全員の意見調整が必要になるため、実務的にも負担がかかる点に注意が必要です。
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現物分割は、不動産を売却せず、そのまま引き継ぐ方法をいいます。
代償分割は、不動産を相続人の1人が取得し、その取得者が他の相続人へ金銭を支払ってバランスをとる方法です。
換価分割は、不動産を売り出して現金化し、その売却代金を相続人間で分け合う分け方です。
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