2024-11-26
根抵当権は主に企業が資金調達のために利用する権利ですが、個人が相続する不動産に根抵当権が設定されている場合もあります。
事業を行っていない方には馴染みが薄く、対応方法に戸惑うこともあるでしょう。
そこで本記事では、根抵当権とは何か、根抵当権付き不動産の相続手続き、根抵当権の抹消方法などを分かりやすく解説します。
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不動産の購入や融資を受けた経験がある人には「抵当権」はなじみがあるかもしれませんが、「根抵当権」はそれとは異なる特徴を持つ権利です。
まずは、根抵当権の仕組みや抵当権との違い、相続を急ぐ必要がある理由についてわかりやすく解説します。
根抵当権とは、融資の限度額内であれば何度でも借り入れや返済が可能な担保権です。
これにより、企業などが柔軟に資金調達できる仕組みとなっています。
極度額(限度額)の設定
根抵当権を設定する際、「極度額」という融資の上限額を定めます。
この金額までは、複数回の借り入れや返済が可能です。
企業に適した仕組み
根抵当権は、主に企業の運転資金調達のために活用されます。
たとえば、企業が建物を担保に根抵当権を設定することで、毎回の手続きなしに必要な資金を借りられるため、スムーズな資金運用が可能です。
手続きとコスト削減
抵当権の場合、借り入れごとに新たな登記が必要ですが、根抵当権では複数回の融資が一つの契約で完結します。
これにより、登記費用や手続きの手間を省けます。
抵当権と根抵当権は似ていますが、運用方法や消滅条件に大きな違いがあります。
抵当権の特徴
抵当権とは、住宅ローンなど特定の債務を担保するための権利です。
返済が滞った場合、金融機関は担保となった不動産を競売にかけて回収します。
返済が完了すれば、抵当権は消滅し、登記抹消の手続きが必要です。
根抵当権の特徴
根抵当権は、極度額の範囲内であれば、何度でも借り入れと返済をおこなえる点が特徴です。
また、元本を完済しても、契約当事者が解除に合意しない限り、根抵当権は存続します。
そのため、複数の融資を柔軟に受けられますが、債務が明確に区分されないため、連帯債務者を設定できない点が異なります。
根抵当権が設定された不動産を相続する際は、いくつかの期限に注意が必要です。
6ヶ月以内の元本確定
相続開始から6ヶ月以内に新たな債務者を登記しない場合、相続開始時点の債務額で元本が確定します。
これにより、根抵当権として再利用できなくなるため、相続手続きを速やかに進める必要があります。
相続放棄の検討は3ヶ月以内
相続では、財産だけでなく負債も引き継ぐ可能性があります。
負債が財産を上回る場合は、相続放棄を検討することが重要です。
相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きする必要があるため、迅速な判断が求められます。
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根抵当権が設定された不動産を事業継続のためにそのまま相続したいケースもあるでしょう。
根抵当権付き不動産の相続は、所有者と債務者の関係によって手続きが異なります。
続いて、相続手続きを円滑に進めるための流れと重要なポイントを解説します。
不動産の「所有者と債務者が同じ被相続人」であれば、相続手続きは比較的スムーズです。
このケースでは、次の2つの手続きが必要です。
不動産の「所有者と債務者が異なる」ケースもあります。
この場合、不動産自体の所有者は変えず、債務者のみが相続によって変更されます。
1. 金融機関への連絡
まず、銀行などの債権者に相続が始まったことを通知し、必要な書類を発行してもらいます。
金融機関との連携がスムーズに進むかどうかが手続き全体に影響します。
2. 遺産分割協議
相続人が複数いる場合、遺産分割協議をおこない、誰が不動産を相続するかを決定します。
事業継続が目的の場合は、会社の新代表者が不動産を相続するケースが一般的です。
また、不動産の所有者と債務者が異なる場合、この段階で所有者と債務者を統一すると、手続きが円滑になります。
3. 登記手続き
根抵当権付き不動産の相続では、以下の3つの登記が必要です。
4. 債権の範囲変更
相続後に新しい指定債務者が決まっても、相続以前の債務がすべてその指定債務者に引き継がれるとは限りません。
遺産分割協議の結果に基づき、債務は相続人全員に分割されます。
ただし、相続人がそれぞれの債務を免責的に処理する場合には、特定の債権として追加する「債権範囲変更登記」も必要です。
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根抵当権が設定された不動産を相続する際、事業継続が目的でない場合、根抵当権を抹消したいと考えることもあるでしょう。
根抵当権を抹消するためには、まず債務の有無を確認し、その状況に応じた対応が求められます。
最後に、根抵当権を抹消する手続きと注意点について解説します。
根抵当権を利用した借金(債務)が残っている場合は、まずその返済が必要です。
以下のような選択肢があります。
不動産の売却で返済を完了する
不動産の売却額が債務を上回る場合、その売却益を使って債務を完済し、根抵当権抹消登記をおこないます。
債務が残る場合は相続放棄も検討
売却しても借金が残る場合、相続人は相続放棄を考えるのも一つの方法です。
相続放棄は、相続開始を知ってから3ヶ月以内におこなう必要があるため、不動産の査定などを早急に進めるようにしましょう。
根抵当権による担保債務がない場合は、金融機関との交渉を経て根抵当権を抹消します。
金融機関と合意して抹消登記を進める
債務が残っていない場合は、金融機関の同意を得て抹消登記をおこないます。
現金での相続を検討する
不動産をそのまま相続する場合、事業を営んでいなければ根抵当権を保持するメリットはほとんどありません。
手続きの手間や将来的な管理コストを考えると、相続時に抹消登記をおこなうことをおすすめします。
根抵当権の抹消手続きでは、金融機関の同意を確実に得ることが重要です。以下の点に注意しましょう。
金融機関の反対に備える
根抵当権は、金融機関にとって融資の安全性を高める重要な権利です。
そのため、取引額が大きい場合などは、抹消に同意を得ることが難しい場合もあります。
相続が理由であることを丁寧に説明し、金融機関から合意を得ることが重要です。
書類の準備と合意の確認
金融機関の同意が得られなければ、抹消登記に必要な書類を発行してもらえません。
事前に確実な合意を取り付け、必要書類を入手してから登記手続きを進めることが重要です。
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根抵当権とは、企業が融資限度額内で繰り返し資金を借り入れられる担保権で、抵当権とは異なり、元本完済後も当事者の合意がない限り消滅しません。
また、相続時には、6ヶ月以内に債務者変更登記をしないと元本が確定し、根抵当権としての柔軟な運用が難しくなるため、迅速な対応が求められます。
債務が残る場合は売却や相続放棄を検討し、債務がない場合でも金融機関の同意を得て抹消登記を行うのが重要です。